更新情報など
◇ トップメニュー、レイアウトの一部変更。
前のページで襲われた具体例を少し書いたが、それから引き出された教訓を元に整理する。明治の有名な食害事件は、人間とヒグマとがテリトリーを奪い合う様な状況で起きている。人里で起きた食害事件では事件を起こしたヒグマには明らかに前兆行動があったのを放置していた。冬に穴に入らないクマは危険である。排除や戯れで襲っても、後に食害に移行する事はあり得、全死亡事故の3割近くに食害があった。ヒグマに襲われた人の生還率は武器を持って闘った人が、武器を持っていなかった人と比べ圧倒的に高い事。ヒグマが人を襲う理由は大まかに4パターンに分けられることなどである。少し詳しく説明する。
・初めから人を喰う目的で襲う
・空腹である時、冬ごもりの穴から追い出されたクマ
・冬ごもりしないクマ・秋に十分食えなかったクマ
・動物性の食物を渇望・特に冬ごもり前
・人の持ち物の獲得と保持のため襲う・テリトリーを保持するため襲う
・不意に出会ったとき・母クマが子を保護する先制攻撃
※排除目的の行動は人の注意で避けられる事も多い。
・戯れの対象として襲う・苛立っている時に襲う
※苛立っている熊は狂気的に襲う事があるという。
※苛立の原因としては空腹、不快感、テリトリー内のトラブルなど。
ハンターが猟犬として訓練するのは、狩猟時にハンター自身へ危害が及ばない様にする目的もある。これを一般人に当てはめると犬連れ入山となるが、一般人の場合は訓練されていない犬を連れて行く事になるので、ハンターより悪い事態を招く事が考えられる。犬連れで助かる可能性もあるが、苛立っている熊だと被害にあう確率が高い。ヒグマ側から見ると排除と反撃という二つの動機が重なるため、今までの例からすると被害は大きくなる可能性が高くなる。
・人を喰う為に襲う・戯れ・苛立ちで襲う・母クマが子を保護する先制攻撃
※母熊の攻撃は人間側の注意で避けられる事が多い。
死んだ振りと無抵抗で助かった実例はない。死んだ振りや無抵抗の状態でクマの噛みつきや爪の引っ掻きに絶えられる人がいるとは思えない。過去に死んだ振り(攻撃されてから死んだ振りをした)をして悪い結果を招いた例もあれば、気絶して助かった実例もある。排除目的であれば助かる可能性はあるがそれ以外には通用しない。
北海道内ではクマ撃退スプレーで助かった実例がない。クマ撃退スプレーは取り扱いに習熟が必要で、かつ使用時の制限が多い。過去の事故例からクマ遭遇時に使える状況は少ないと思える。薬剤の有効性とは次元の異なる問題。
9件の死亡例の中で反撃に使える武器になるものを持っていなかったものが7件、持っていたのは2件。生還した19件では持っていた鉈や鎌または素手で反撃して生還している。この事からは武器がある無しで生還率が全く違う事が分かる。武器の携行は絶対に必要と思います。
最良なのは熊のいる所に近づかない事だが、北海道でアウトドアという場合は殆ど不可能に近い話です。最も重要なことは、まず人の方でヒグマとの遭遇を積極的に避けることである。そのために鈴や笛などの鳴り物を鳴らして歩くこと、時々大声を出すのも良い。これによってヒグマとの遭遇をほとんど予防できる、ただ好奇心の強い熊を呼び寄せる可能性も有り完全ではない。そういう訳で幾つか注意するべき事をあげてみた。知床自然センターにもヒグマ対策の情報があるので参考にしてください。ただしハンターと一緒に山歩きをして来た僕の体験からすると防御姿勢(無抵抗)の部分だけは賛同出来ませんが。
基本的に1飲み水2食べ物3隠れる場所という三条件が揃っている所には熊が日常的に居着いていると考えてよく、我々に見えないだけ。その地域に生息するヒグマの季節毎の移動パターンを知る事は、ヒグマとの遭遇を避ける上で重要な情報ですが、生息する地域環境により異なり、平地の方が予想しずらいと言えそうだ。どちらにしても1~3の条件が揃っている場所は、ヒグマの住み家と餌場が重なっているため、不用意に踏み込むと攻撃の対象になる可能性が高くなる。条件が二つから一つと少なくなる程に危険は少なくなるが野生動物の事、何が起こるか判らないというのが本音。当然ヒグマの住み家に踏み込むにはそれなりの防衛対策は絶対に必要です。
3月になると早い個体は越冬穴から出る。この季節は標高の低い東や南斜面の沢沿いで越冬穴近くに多い。越冬穴から出て最初に食べるのはミズバショウで、冬眠中にたまった宿便を出す為と云われているが真偽の程は不明。川に出入りする熊が多いのはザリガニ類を探して歩くため。続いて雪解けが早くフキやセリの仲間が育つ所に移動。もう一つは大型動物の死体を探して食べる為、熊の生息域ではシカの死体には絶対に近づかない事、不用意に近づくと潜んでいたクマが餌を守るために攻撃してくる事があります。鹿の斃死体が多いのは僕の知っている限りでは一番は渓流沿い、次いで大きな崖下に多かった。冬籠もり明け直後は空腹による苛立ちや子連れで攻撃的というが、立ち上がる筋力が落ちているので噛みつき攻撃が多いようで、手や足などが攻撃の対象になりやすいというが、穴にこもっていた期間の違いなどで個体差はある。冬ごもり中の事故は山林作業中というのが多いようです。最近は暖冬で穴に入らない個体もいるというが、狩猟の不始末と関係あるかもしれない。
シカが出産する場所に、生まれたばかりのシカを狙って出没する。山菜採りに適した場所はヒグマもよく利用する。山岳を持つ地域は餌を求めて高山帯に移動する個体も出てくる。アリもヒグマの利用する餌なのでアリの多い所では注意。高山植物の果実もヒグマの好物。コケモモなど果実を付ける植物の多い所では注意しましょう。餌の豊富な沢には周年居着いている個体も多い。見通しの悪い急な曲角や、渓流が急に濁ってきた時などは注意を。渓流などでは犬笛が有効というが・・確証はない。この時期は熊も体力を回復しているので、攻撃は立ち上がって手の爪で攻撃することが多いという。狙われるのは頭の方が多いという事になるが定型はない。
8月末~11月にかけて鱒や鮭が遡上する川の河口付近、堰堤と魚が溜まりやすい滝等に良く出てくる。市街地に近くても危険度は同じです。果実ではヤマブドウやサルナシの多いところは要注意。ミズナラ等の多いところではドングリが地上に落ちてから現れる事がある。ドングリが地上に落ちて渋が抜けてから食べに来るという。意外と知られてないがキノコも熊の好物。マイタケ等のある様な所は熊もいる事が多い。不用意に餌場に入らない事。
食べ物を野外に放置しない事、ゴミを捨てない事、食べ物や生ゴミは土に埋めても無駄。鋭敏な嗅覚で掘り出してしまう。ヒグマが人の食べ物の味を覚えてしまうと、再びその食べ物を求めて人の居る所に近づくようになり、事故を起こす可能性が高くなる。知床では人慣れして周りをうろつくヒグマが増えつつあるといい、これを新世代クマと呼んでいるようだが、そういう意味では知床では何時人身事故が起きても不思議ではない。
食べ物などの生ゴミなどを捨てたり放置しておくと、ヒグマを引き寄せ、自分だけでなく、後からそこに来る人にまで危険にさらす事になる。食事や料理はテントから離れてしてください。テント内に食べ物の臭いが残っているのは危険です。焼き肉などは臭いが着衣に付くため止めた方が方が良い。食べ物の管理は臭いを断つ事、テントの傍や中に置かない事が必要です。残飯は埋めても熊に掘り返される、捨てる時は不本意だが川に流すしかない。
1鈴など自然には無い音を出すものを利用すると良い、ただ鈴は好奇心の強い熊を呼び寄せる事もあり万能ではない。2停泊中にはラジオなどの利用も良い。鈴やラジオは音でヒグマの気配がわかりにくい事も有る。3遠距離では爆竹が効果的な事も多いが、近距離では危険とも。使い分けに工夫が必要になります。
地形の条件と気象条件、季節など複雑になるがこんな時には注意を◇夜間や早朝◇霧や日暮れの時間帯◇沢沿い◇急カーブ◇雨の日◇風の強い日等におきやすい。
大きな動物が動く気配がし、その後静かになったり、強烈な獣臭がある時は、ヒグマが隠れてやり過ごそうとしてる可能性も有る。距離にもよりますが引き返したほうが賢明、ただ中には背後から襲れた事例もあり十分に注意する様に。クマに対する訓練を受けている犬以外を連れて行くのは危険な事もあります。子グマには近づかない事、不用意に近づけば、母グマの攻撃に遭う事になる。ヒグマとの遭遇で一番事故の多いパターンかも。
距離が離れていてクマがこちらに気付いていない時には、気付かれない様にその場から離れる。クマが人に気が付いているが行動を起こさない時は、クマの様子をみながら静かにゆっくりとその場から離れましょう。落ち着いて冷静に行動してください。背を見せたり、走って逃げたりするとクマの習性として必ず襲ってくると思った方が良い。
人間が居る事に気付かずに来ている可能性があるので、クマに人が居る事が分かる様に大きく腕をふりながら、最初は普通の声で、次に大きな声でヒグマに確実に分かるように思いつくままに声をかける。最後は大声で威嚇する事も必要。人の声で立ち去る熊もいます。背中を向けて走って逃げるのは逆効果と思ってください。傘などを開くと効果的という方もいるが(自分を大きく見せる)山に傘を持っていく人がいるとは思えない。
人が居るのを知ってもなお近づいて来るときは、興味本位または捕食目的で近づいている可能性もあり、その時は車内や屋内などに退避する。クマが興味を持ちそうな物を置き距離を稼ぐ。同時に大声や音の出るもので威嚇は続けること。この時点で爆竹などの効果のあった実例がある。
クマが明らかに人を意識しながら接近を続け、逃げ切れそうにないときはクマの興味をそらす。常に首にタオルを巻いておき体臭の染み込だタオル投げてクマの関心をそらすのはかなり有効な方法。タオルに関心を奪われている間に熊との距離を広げられ待避できる事が多い。タオルは常に首に巻いておく事。タオルがなければ散紙やハンカチ等に唾を付けたり小石など使えるものは何でも良い。爆竹の連発なども試してみること。これで退散する可能性もある。クマ撃退スプレーの噴射の準備と武器の用意、実際にクマ撃退スプレーで反撃出来る可能性があるとすればこのケースだけと思う。
それでも執拗に近づいて来る場合は完全に人目当てと判断した方が良い。逃げ場がなく、逃げ切れそうになければ、強気に格闘を決意するしかない。自分を大きく見せる、大きな声と音で威嚇、あとは徹底して抵抗するしかない。クマ撃退スプレーは使用上の制約が多いので使えるとは限らない。ここで最後の頼りは武器となるが、その武器が有る無しは生死の分岐点となるかも知れない。鉈があれば一番だが、棒切れでも小石でも拾い持つことだ。立木などを挟んでヒグマと対抗、岩の上等に登って対抗など地形を利用して対抗する方がいい。登れる太い樹があれば樹上に逃れて対峙するのも一策。こういうタイプの熊には死んだふりは絶対に通用しない。どのような形で有れ戦う以外生還出来る可能性は無い。それも運次第と云うことになる。
沢の曲がり角などで出会い頭で、クマがのっそりとひょっこり出てくる、立ち上がるとかする事がある。その場合はとにかく落ち着いて対応する事。静かに行動し傍に障害物(岩や立木など)があれば熊との間に挟む。クマが立ち上がるのは驚いたり周りの様子を確かめる時にする動作で、必ずしも攻撃という訳では有りません。普通の音声かあるいは少し高い音声で、何でも良いからクマに話しかける事でヒグマも人も冷静になれる。これで多くの場合は熊の方から去る。それでも熊が立ち去らない時は、熊の通路を邪魔している事もあるので、熊の様子を窺いながら自分も少しずつその場から離れてみる。絶対に走らない事、あとは先に書いた3~4と同じ対応で
突進してくる時点で、威嚇なのか本当の攻撃見分ける事は困難で余裕も無いと思って良い。ここでは攻撃してくるクマに対して覚悟して強気で反撃に出る事。その為に鉈の様な武器は必ず携行する事。突進して来るクマに対しクマ撃退スプレーがいつでも使用できると限らないし、正確に噴射する事は難しいうえ、使用する本人自身にも危険を伴います。それに突発的な出逢いではスプレー噴射の余裕は無い。つまりヒグマ撃退の主力はあらゆる時に対応可能な鉈などの武器による反撃が本命で、クマ撃退スプレーは脇役でしかない。無いよりは有った方が良いと云う事だ。
知床自然センターのサイトに「本当の攻撃の場合(突進が止まらず3~4mの距離まで迫ったら)クマスプレーがあれば、全量をクマの目と鼻に中るように一気に噴射します。クマスプレーがない場合(またはスプレーが効かず攻撃を受けてしまったら)その場に倒れこんで、防御姿勢をとりましょう」襲われた時の防御姿勢は「うつ伏せになって顔と腹部を守り、首の後ろは手を回して保護する。バックパックがプロテクターになります。転がされても、その勢いで元の姿勢に戻ること」と有った。クマは射程圏外から3~4mを一足飛びで一気に目前に詰めてくる。取り扱いに熟練していてもクマ撃退スプレーの正確な噴射は難しい。ハンターが反撃された場合はその被害はかなり激しいのが普通です。その例からするとこの場合はクマスプレーが熊への攻撃であり、失敗した後で防御姿勢(無抵抗)を取ったとしても、ただクマの反撃を許すだけで、捕食目的ならば生還は絶望的となる。さすがに「死んだ振りは」いつの間にかセンターのサイトから消えたが・・・防御姿勢という考えだが実際にそれに耐えられる人がいるとは思えない事と、統計的なデータも無く根拠は極めて曖昧。威嚇や排除だけなら助かる可能性はありそうだが。云えることは熊に喰われる事をも覚悟し防御姿勢で無抵抗をとり後は運を天に任すか、より確率の高い徹底的な反撃で生還を目指すかの選択と云う事になる。どちらも最後は運次第という事には違いないが。少なくとも僕は無抵抗に殺されるより反撃する方を選択する。
僕と良く山歩きをしたハンターの話では、ヒグマはやられた相手を覚えていて報復する個体も居るともいっていたが、特殊な事で一般人では余り関係はないが、ただ手負いになったクマは無差別に人を襲う事は有る。ヒグマは際だって学習能力の高い日本では陸上最強の哺乳類なので人に対する攻撃も、その目的によって違いが有ることを覚えておこう。極端な例としては捕食目的で物陰に隠れて人をやり過ごし背後から襲った例もある。最良の防御法は一にも二にも出会ない事につきる。ヒグマの生息圏に入る以上は、まずヒグマに会わずに済ます為の知恵と情報を可能な限り集めてからにしてください。そしてどうしてもヒグマのテリトリーに入らなければならないときはその対応を再度確認し、遭遇予防ツールと、撃退用の装備は必ず携行する事を忘れないで。クマ撃退スプレーの過信は禁物です。
最も参考になるのは■北海道の自然・ヒグマ■犬飼哲夫/門崎允昭著・北海道新聞刊でしょう。当サイトではこの本を参考にしています。他にコタン生物記、神々の遊ぶ庭も参考にしました。参考サイトは一覧に有ります。
◇ トップメニュー、レイアウトの一部変更。